青空スポーツ新聞 MEMORY of SEIBU DOME

全国では冬の嵐が吹き荒れ、所沢でも朝の気温が氷点下となった1月15日の土曜日。タワーレコード代表として戦うことになった青空ドリームスの選手達は、下田代のヤル気がほとばしる午前7時の到着を皮切りに、続々と西武ドームに終結し集合時間の8時半には全員が勢揃いした。
様々なミッションを抱えて臨む初のイベントマッチとなるが、果たしてこの日の気温が指し示すような寒い試合となってしまうのか、それとも、グラウンドに熱風を巻き起こす熱き戦いとなるのか?
全く予想もつかないまま、ドリームスナインは期待と不安を胸に抱えながら、西武ドームの入場ゲートを潜っていった。
  

  
するといきなり、二子多摩川では経験したことのない壮大な光景が目に飛び込んできた。
巨大な屋根にスッポリと包まれ、緑鮮やかな人工芝のグラウンド。見渡す限りの観客席に、電光掲示板がどっしりとそびえ立ち、ドリームスナインを出迎える。
そして、選手達の声だけが木霊する絶対的な空間に、皆のテンションは軽々とK点越えを記録し、イベントマッチを前に早くも達成感に包まれてしまいそうになる。
更には、野球中継でも滅多にお目にかかれないベンチや控え室を前にして興奮は一層高まり、子供のようにハシャギまくるオヤジ達の姿がそこらじゅうで見受けられた。
果たして、こんな調子で試合は大丈夫なのだろうか?そんな監督が心配・・・する訳もなく、自らグラウンドを跳ね回ってあちこちでカメラを撮りまくる、一番落ち着きのないオッサンの姿がそこにはあった。
   

  

  

  

  
はやる気持ちを抑えながらウォーミングアップをこなした後、ノックが始まると、次第に球場にも慣れ、体も暖まってくる。やがて練習時間も終わりベンチに引き上げる頃になると、入れ替わるように対戦相手となるトータルテンボス率いるアフロチームが、遂にグラウンドに姿を現した。
テレビでもお馴染みの顔ぶれに相まって、ホークスカラーのユニフォームが、やけに大きくグラウンドに映える。
続いて始まった軽快なキャッチボールで、球場全体に響き渡るミットの音が聞こえてくると、それまでハイテンションだったドリームスナインの士気が、一気に氷点下まで下がり始めた。
マジ、ハンパね… いや、マジ強そう…
思わず息を呑むナインを他所に、刻一刻とイベントマッチの開始時間が迫ってくる。
しかし、戦う前から試合を諦める訳にはいかない。
この日のために、ハンパねぇレトレーニングを重ね、ハンパねぇ助っ人達が駆けつけてくれているだけに、自分たちを信じ、自信を持って戦えば勝利は掴み取れるはずだ。

そんなハンパねぇ助っ人達だが、同じタワーレコードのDNAを持つ宿敵?ヒッターズから岩瀬、平野の両選手が、更にアフロヘアー?にはアフロヘアーを以って制すということで、ミュージシャン界のアフロヘアー代表ことMOBY(from SCOOBIE DO)選手と、お笑いにも対抗するべく芸人ジャンみやがわ選手が、この日のために参加してくれた。
これにドリームスナインを加えた総勢16名の選手達と、おにぎりを作って駆けつけてくれた自称南ちゃん達(若干名)とが一つになって、タワーレコード代表として試合に臨むことになる。
   

   

  

  

  


いつ頃ブルペンに入ろうかな?

  


   

ドーム内に照明が灯り、バックネット裏がお客さんで埋められると、両チームの先発メンバーの場内アナウンスが流れ始め、徐々に球場内の緊張感も高まっていく。
夢のような心地と迫り来る現実がオヤジ達の胸に去来する中、選手入場のアナウンスに促されると、行進曲に乗って両チームがホームベース付近に整列し、いよいよイベントマッチの幕が切って落とされようとする。
マイクパフォーマンスや記念撮影などイベントを盛り上げる演出が続く中、今更ながらタワーレコードとして戦う責任の重さを噛み締めるナイン達。
もはや、逃げも隠れもできない状況を迎え、トータルテンボスの大村ジュニアによる始球式が行われると、後はプレイボールの掛け声を待つのみとなった。
   

  


トータルテンボス大村ジュニアによる始球式。打者は大村の父敏和さん
   

この日のタワレコ代表となる先発メンバーだが、攻守に安定感のあるヒッターズ岩瀬をサードに据え、今日がユニフォームデビューとなる新入団選手ブルボン川崎をセカンドで起用。
一方、久保田がマウンドへの夢が断たれることを意味するDHに入り、小河原は戦況を見守るため自ら先発メンバーを外れるなど、序盤を手堅く進める布陣で臨む格好となった。
尚、先発マウンドは予定通りエース梅川に託されたが、対するアフロモンキーズの先発マウンドに芸人シューレスジョーが登ったことで、偶然にもシュー同士の異種対決が実現している。
   


本物のウグイス嬢の場内アナウンスにより先発オーダーが発表!
  

初回先攻は、ドリームスことタワレコ代表チーム。
プレイボールの掛け声と共に打席に宮崎が入ると、記念すべき第一球が投じられた。
すると、いきなり宮崎が狙っていたかのようにフルスィングを試み、キャッチャー横に転がるファウルボールとなる。
初球から気合いの篭った打席を披露し、昨シーズンにリーディングヒッターとなった自信を覗かせる宮崎に、ナインの誰もが感嘆の声を送ろうとしたその時、ファウルボールは動いていた!
逆スピンの効いた打球がファウルゾーンの人工芝をしっかりと捕らえると、なんとフェアゾーンに転がり出して、まさかのピッチャーの足元へ。
宮崎が慌てて走り出したものの時すでに遅し、ピッチャーから一塁にボールが送られると、声を失ったベンチの視線の先に、一塁線上で力無くうな垂れるラガーマンの姿があった。
まさに、気合いとは裏腹にこれ以上の無い形で出鼻をくじかれてしまったタワレコジャパン。
続く角田がサードゴロ、稲村は三振に打ち取られ、流れを変えることなく3者凡退で初回の攻撃をあっけなく終えた。
  


初回、サードゴロに倒れる角田選手
  

その裏、初回の先発マウンドには梅川が登る。
しかし、先頭打者にヒットを許すとすかさず盗塁を決められ、続く打者には四球を与えてしまい、いきなり無死1、2塁のピンチを迎えてしまう。
なんとか3番のトータルテンボス大村を三振に打ち取ったものの、4番を迎えてなおピンチは続く。
パワーヒッターのオーラを纏ったバッターの登場に、すかさずタワーベンチからレフトを守る角田にお告げが示される。
「レフト下がれたもう!」
すると、4番打者の放った当たりは、まさにお告げに導かれるようなレフトへの大飛球。
これを角田が見事に捕らえてアウトを成就させると、梅川が続く打者をピッチャーゴロに退け、ベンチと選手が一体となって初回のピンチをなんとか切り抜けてみせた。
   


先発した梅川選手のピッチング

  


チーム一体となって、初回のピンチを切り抜けた後のベンチ前
   

これで勢いに乗っていけるかと思われたが、2回表の攻撃では、川崎がチーム初安打と盗塁を披露してベンチを一瞬沸かせたものの、他が続かず無失点に終わる。
すると、続く2回裏に入ってアフロモンキーズがその実力を見せ始める。
梅川が先頭を退けたものの、後続に死球とヒットに足を絡めた攻撃を許し、1死2,3塁と再びピンチを迎えてしまうと、迎えた9番大西ライオンの放った当たりは、またもやレフトへの飛球。
一瞬、平凡なレフトフライかと思われたが、次第に打球はグングンと伸び、角田の遥か頭上を越える当たりとなる。
これを、角田が懸命に追うものの、底冷えのするグラウンドに足腰が弱っていたのか、足がもつれてもんどりを打って転げ回っている間に、大西ライオンが一気にホームを駆け抜ける先制3ランとなってしまい、遂に均衡が破られた。
   


2回表、チーム初安打を放つ川崎選手

  

  


   

3回に入り、なんとか反撃の姿勢を見せたいタワレコジャパンだが、死球を受けて出塁した下田代がその直後に牽制死をするなど、なおも精彩を欠いた攻撃が続いてしまう。
すると、その裏の守りで梅川の腕の振りが明らかに鈍くなり、突如崩れ始める。
先頭のトータルテンボス大村への四球を皮切りに、この回だけで、与3四死球、2盗塁、1暴投、被2安打と、今まで見せたこともない大乱調に陥り、内野陣の失策も絡んで大量4点を失い、0対7と一方的にリードを広げられてしまう。
弱投チームにあって、これまで一人でマウンドを支え続けてきた梅川だったが、やはり代表選手として戦う西武ドームのマウンドは、別格のプレッシャーだったのか、この回で無念の降板となり、シュー対決でも敗れ去る形となった。
続く4回の攻撃も、宮崎が相手の連続エラーで3塁まで進んだものの、結局、打線の繋がりを欠いて凡退に終わってしまい、なかなか反撃の糸口すら掴めないまま、ゲームは終盤に入っていく。
   

  

  

    


ユニフォームを新調するも不発に終わった伊橋選手

  


ネクストバッターズサークルで打順を待つモビー選手

  


ベンチ裏で出番を待つ毎熊選手
  

その裏4回のマウンドには梅川の後を受けて小河原が登板。
先頭にヒットを許したものの、代打で登場したトータルテンボス大村の父、敏和を内野ゴロに打ち取り、更にランナーで入れ替わった父敏和の盗塁を稲村が刺してみせると、続くフルーツポンチ亘を三振に斬って取り、無失点に抑えて最終回に望みを託した。 
   

  


強肩を披露した稲村選手

  


   

そして、7点のリードを許して迎えた最終回の攻撃。
タワレコジャパンはベンチメンバーを総動員して最後の反撃を試みるべく代打に園田を送ると、対するアフロモンキーズは、アメリカ独立リーグでの野球経験のあるリリーフを立て万全の継投策を講じてくる。
ここでの一打は、まさに存在感を示すには絶好の機会となる園田だったが、結局いつもと変わらぬプレースタイルを貫き、ピッチャーゴロに倒れてあえなく1アウト。
続く小河原は、これまで一度もやったことのないバントヒットを試みて千鳥足を披露するも、最終的にはヒットを放ってなんとか出塁し、後続の選手に繋げる粘りを見せた。
そして、ここでタワレコジャパンはとっておきの代打、ダークサイドからの刺客、毎熊を打席に送る。
笑いのプロ集団を相手に毎熊のフォースは果たしてどこまで通じるのか?場内の視線が毎熊のバットに注がれる中、満を持して打席に入る。
すると、幾多の場面で数々の奇跡を起こしてきた、このオヤジのバットから、またしてもミラクルな一打が放たれる!?
と言うには程遠い、毎熊の当たりは、あろうことかセカンドへのボテボテのゴロ。
万事休すと思われたその当たりは、この回からセカンドの守りに就いていた、アフロモンキーズで万物の神様から見放された男と呼ばれ、更にはグローブを忘れて素手で立ち尽くす他なかった、あっぱれコイズミの前へと転がっていくのだった。
慌てて帽子を差し出すも、全くボールが手に付かないあっぱれコイズミ。
まさにボールからも見放されるあっぱれなプレーを披露している間に、なんと毎熊が1塁を陥れ、平凡なセカンドゴロのはずが、反撃のチャンスが広がる一打へと、見事に代えてしまったのだ。
もはや理屈を越えたまさかの一打に、なんか色々な神々が舞い降りる瞬間を見た気がした。
この一打で1死1、2塁となり、続く打席にはジャンみやがわが入って、タワレコジャパン自慢のお笑い打線に期待が集まる。
そんな芸人の意地?をかけたジャンみやがわの当たりは、鋭いライト方向への飛球。
しかし、ベンチが総立ちになったのも束の間、当たりが良過ぎてライトがこれを前進して掴み、惜しくもアウトとなってしまう。
それでも、なお2死1、2塁として、最後のベンチメンバーとして残っていた、ヒッターズ平野に辛うじて打席を回して、最後の望みを繋いでみせる。
図らずもタワレコ代表の命運を背負って打席に向かう平野。すると、バックネット裏から「体が細い~」との観客の声が、どこからともなく漏れ聞こえてくる。
確かに、カメラ撮影に没頭し、真っ白なユニフォームに包まれたその細身な体に、最後の反撃の一打を背負わせるのには、あまりにも酷な場面だったのかもしれない。
結局、相手リリーフエースの前に力無くバットが空を切り、あえなく三振を喫すると、黄色い歓声とオヤジ達の溜息が交差する中、西武ドームの戦いにピリオドが打たれた。
  

  


5回表、ベンチメンバーに繋げる一打を放つ小河原選手

   
=TOWER RECORDS featuring Aozora Dreams=
  1 CF / MIYAZAKI
  2 LF / KAKUTA ⇒ MOBY
  3 C / INAMURA
  4 SS / IHASHI
  5 3B / IWASE ⇒ PH / SONODA
  6 2B / KAWASAKI ⇒ P / OGAHARA
  7 DH / KUBOTA ⇒ MAIKUMA
  8 P / UMEGAWA ⇒ 2B / JAN MIYAGAWA
  9 RF / SHIMOTASHIRO ⇒ PH / HIRANO
10 1B / TAKEHIRO

TOWER RECORDS | 0 0 0 0 0 | 0
Afro    MONKEYS   | 0 3 4 0 × | 7

※詳しい成績はウェブスコアブックをどうぞ

   
終わってみれば0対7と、まさに実力通りの完敗を喫したゲームではあったが、選手達は最後まで緊張感を失うことなく戦い抜き、点差を感じさせない拮抗したゲーム内容を披露して見せた。
特に、再三好守を見せたサードの岩瀬を筆頭に、外野からの中継プレーでも幾度となくクロスレーを披露するなど、守備面での健闘が光った。
一方の打撃は、のっけからの先頭宮崎のまさかのアウトでリズムが狂ってしまったのか、ゲーム終盤まで淡白なバッティングが続き、最終回に粘りを見せたものの遅きに失し、無得点に終わったのが悔やまれる。
ゲーム全体では、野次のスペシャリスト池谷が、実況席に身柄を奪われ貴重な戦力を失ってしまったことや、梅川に予想もしていなかった突然の乱調が起きてしまうなど、いつもとは勝手の違う試合に、なかなか自分達のリズムに乗って戦うことができなかった。
それでも、イベントマッチという特殊な状況の中で、持ち前のサービス精神を発揮して、様々なミッションをクリアしながら、試合を全うした選手達の底力には、改めて驚かされる思いがした。
   


再三の好守を見せた岩瀬選手

  


ボールにも、笑い?にも見放されたあっぱれコイズミ選手。この日、タワー新宿店でのアルバイトが決定した。

  


バットではイマイチだったが、カメラを手にして存在感を放った園田選手

  


試合終了後、マウンドに登る久保田選手
   

紆余曲折を経て実現に至った今回のイベントマッチではあるが、終わってしまえば、憧れの西武ドームのグラウンドで芸人チームとプレーができ、更には自分の名前が場内アナウンスで呼ばれ電光掲示板に載るなど、またとない経験をさせてもらい、最近めっきり刺激が少なくなってきたオヤジ達の日常に、一生忘れることの出来ない思い出を刻むこととなった。
恐らくは、ネオン街のトレーニングでも、その効果が暫く試されることであろう。
この機会を用意していただいた、トータルテンボスを始めするアフロモンキーズ並びによしもと関係者の皆さま、更にはタワーレコード関係者及び、参加、ご協力いただいた全ての皆様へ、青空ドリームスに成り代わって、この場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました!
そして、イベントマッチ実現に向け奔走した下田代タワレコ草野球協会会長を筆頭に、青空ドリームスの皆さま、誠にお疲れ様でした!
尚、今回で下田代会長が、その任を辞して一選手に戻るとのことだが、今後も一兵卒に留まらない活躍を是非とも期待したいところだ。
  

   
例年とは違って、1月から始動するイレギュラーな幕開けとなった2011年の青空ドリームスだが、まだまだシーズンも始まったばかり。
この先、どんな活躍を見せてくれるのか、今シーズンも読者の興味が尽きる事はない。
とはいえ、冬の寒さはオヤジの体には堪えるので、宴会好きの某レフトみたいに足腰を冷やしてコケないよう、くれぐれもオフシーズンのトレーニングには気をつけてもらいたい。
そんな訳で、次回の更新は春頃の予定?
それまで、読者の皆さま、ごきげんよう!

= 青スポ編集部 =

  

 

おまけ

   

   

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